中華人民共和国特許法（改正）

（1984年3月12日第6期全国人民代表大会常務委員会第4回会議で採択された。その後、1992年9月4日第7期全国人民代表大会常務委員会第27回会議で公布した「「中華人民共和国特許法」を改正することに関する決定」に基づき、第1次の改正が行われた。2000年8月25日第9期全国人民代表大会常務委員会第17回会議で公布した「「中華人民共和国特許法」を改正することに関する決定」に基づき、第2次の改正が行われた。2008年12月27日第11期全国人民代表大会常務委員会第6回会議で公布した「「中華人民共和国特許法」を改正することに関する決定」に基づき、第3次の改正が行われた。2020年10月17日第13期全国人民代表大会常務委員会第22回会議で公布した「「中華人民共和国特許法」を改正することに関する決定」に基づき、第4次の改正が行われた。）

目 次

第一章 総則

第二章 特許権付与の要件

第三章 特許の出願

第四章 特許出願の審査及び許可

第五章 特許権の存続期間、消滅及び無効

第六章 特許の強制実施許諾

第七章 特許権の保護

第八章 附則

第一章 総則

第一条

特許権者の合法的な権利を保護し、発明創造を奨励し、発明創造の応用を推進し、イノベーション能力を高め、科学技術の進歩と経済社会の発展を促進することを目的とし、本法を制定する。

第二条

本法でいう発明創造とは発明、実用新案及び意匠をいう。

発明とは、製品、方法又はその改良について出された新しい技術をいう。

実用新案とは、製品の形状、構造又はそれらの組合せについて出された実用に適した新しい技術をいう。

意匠とは、製品の全体又は一部の形状、模様又はその組合わせ並びに色彩と形状、模様の組合せについて出された、美感に富み、工業的応用に適した新しいデザインをいう。

第三条

国務院特許行政部門は全国の特許業務の管理に責任を負い、特許出願を統一的に受理及び審査し、法に基づき特許権を付与する。

省、自治区、直轄市人民政府の特許事務管理部門は、その行政区域内の特許管理業務に責任を負う。

第四条

特許出願する発明創造が国家の安全又は重大な利益に関連し、秘密保持の必要がある場合は、国家の関係規定に基づき取扱う。

第五条

法律、公序良俗に違反し、又は公共利益を害する発明創造に対しては、特許権を付与しない。

法律、行政法規の規定に違反して遺伝資源を取得または利用し、かつ当該遺伝資源に依存して完成した発明創造に対しては、特許権を付与しない。

第六条

所属機関又は組織の任務を遂行し又は主として所属機関又は組織の物的技術的条件を利用して完成させた発明創造は職務発明とする。職務発明の特許出願権はその機関又は組織に帰属し、出願が許可された場合は、その機関又は組織が特許権者となる。当該機関又は組織は、関連する発明創造の実施と活用を促進するよう、その職務発明創造の特許出願する権利や特許権を法により扱うすることができる。

非職務発明創造を特許出願する権利は発明者又は創作者に帰属し、出願が許可された場合は、発明者又は創作者が特許権者となる。

所属機関又は組織の物的技術的条件を利用して完成させた発明創造について、機関又は組織と発明者又は創作者間で契約を締結し、特許出願する権利及び特許権の帰属について約定されている場合は、その約定に従う。

第七条

発明者又は創作者の非職務発明創造の特許出願に対して、いかなる機関又は組織又は個人もこれを抑圧してはならない。

第八条

2つ以上の機関又は組織又は2人以上の個人が協力して完成させた発明創造、又は一つの機関又は組織又は個人が他の機関又は組織又は個人の委託を受けて完成させた発明創造については、別段の合意がある場合を除き、特許出願する権利は完成又は共同で完成させた機関又は組織又は個人に帰属する。出願が許可された場合は、出願した機関又は組織又は個人が特許権者となる。

第九条

同一の発明創造には一つの特許権のみが付与される。ただし、同一の出願人が同日に同一の発明創造について実用新案特許出願と発明特許出願の両方を行っており、先に取得した実用新案特許権が消滅しておらず、かつ出願人が当該実用新案特許権を放棄するという意思表明を行った場合、発明特許権を付与することができる。

2人以上の出願人が同一の発明創造について個別に特許出願した場合、特許権は先に出願した者に付与する。

第十条

特許出願権及び特許権は譲渡することができる。

中国の機関又は組織又は個人が特許出願権又は特許権を外国人、外国企業又は外国のほかの組織に譲渡する場合、関係法律、行政法規の規定に基づいて手続きを行わなければならない。

特許出願権又は特許権を譲渡する場合、当事者は書面により契約を締結し、かつ国務院特許行政部門に登録しなければならない。国務院特許行政部門はこれを公告する。特許出願権又は特許権の譲渡は登録の日より効力が生じる。

第十一条

発明特許権及び実用新案特許権が付与された後、本法に別段に定めがある場合を除き、いかなる機関又は組織又は個人も特許権者の許諾を得ずに、その特許を実施してはならない。すなわち、生産経営を目的とするその特許製品の製造、使用、販売の申し出、販売、輸入、又はその特許方法の使用、及びその特許方法により直接得られた製品の使用、販売の申し出、販売、輸入をしてはならない。

意匠特許権が付与された後、いかなる機関又は組織又は個人も特許権者の許諾を得ずに、その特許を実施してはならない。すなわち、生産経営の目的とするその意匠特許製品の製造、販売の申し出、販売、輸入をしてはならない。

第十二条

いかなる機関又は組織又は個人も、他人の特許を実施する場合は、特許権者と実施許諾契約を締結し、特許権者に特許実施料を支払わなければならない。被許諾者には、契約に定められた以外のいかなる機関又は組織又は個人に対しても、その特許を実施することを許諾する権利はない。

第十三条

発明特許出願の公開後、出願人はその発明を実施している機関又は組織又は個人に対して、適当な対価を支払うよう要求することができる。

第十四条

特許出願権又は特許権の共有者に権利の行使に関する約定がある場合、その約定に従う。約定がない場合、共有者は単独で当該特許を実施するか、又は他人に当該特許の通常実施権を許諾することができる。他人に当該特許の実施権を許諾する場合、実施料を共有者間で配分しなければならない。

前項に規定する場合を除き、共有の特許出願権又は特許権を行使する場合、共有者全員の同意を得なければならない。

第十五条

特許権を付与された機関又は組織は、職務発明の発明者又は創作者に対して報奨を与えなければならない。発明創造の特許を実施した後、その普及応用の範囲及び取得した経済的利益に基づき、発明者又は創作者に対して合理的な報酬を与えなければならない。

国は、発明者又は創作者が合理的にイノベーションによる収益を共有できるよう、特許権を付与された機関又は組織が株式、オプション、配当等の方式を通じて財産権による激励を実施することを奨励する。

第十六条

発明者又は創作者は、特許書類に自分が発明者又は創作者であることを明記する権利を有する。

特許権者は、その特許製品又はその製品の包装に特許標識を表記する権利を有する。

第十七条

中国に恒常的な居所又は営業所を有しない外国人、外国企業又は外国のその他の組織が、中国で特許出願する場合、その属する国と中国とで締結した協定又は共に加盟している国際条約又は互恵の原則に従い、本法に基づいて取扱う。

第十八条

中国に恒常的な居所又は営業所を有しない外国人、外国企業又は外国のその他の組織が、中国で特許出願する場合、及びその他の特許事務を行う場合、法に基づき設立された特許代理機構に委任しなければならない。

中国の機関又は組織又は個人が国内で特許出願する場合、及びその他の特許事務を行う場合、法に基づき設立された特許代理機構に委任することができる。

特許代理機構は、法律と行政法規を遵守し、委任者の委任に従って特許出願又はその他の特許事務を取扱わなければならず、委任者の発明創造の内容について、特許出願がすでに公開又は公告された場合を除き、秘密保持の責任を負う。特許代理機構の具体的な管理方法は国務院が規定する。

第十九条

いかなる機関又は組織又は個人も、中国で完成した発明又は実用新案を外国に特許出願する場合、事前に国務院特許行政部門による秘密保持審査を受けなければならない。秘密保持審査の手続き、期間等は国務院の規定に従って実施する。

中国の機関又は組織又は個人は、中華人民共和国が加盟した国際条約に基づいて国際特許出願することができる。出願人が国際特許出願を行う場合、前項の規定を遵守しなければならない。

国務院特許行政部門は中華人民共和国が加盟した国際条約、本法及び国務院の関係規定に基づいて国際特許出願を取扱う。

本条第一項の規定に違反して外国に特許出願した発明又は実用新案の中国における特許出願に対しては、特許権を付与しない。

第二十条

特許出願と特許権の行使は信義誠実の原則を遵守しなければならない。特許権を濫用して公共利益又は他人の合法的な権益を害してはならない。

専利権を濫用して競争を排除し又は制限し独占行為を構成した場合、「中華人民共和国独占禁止法」に従って処理する。

第二十一条

国務院特許行政部門は、客観的、公正、正確、適時という要請に基づき、関係する特許出願及び請求を法に照らして取扱わなければならない。

国務院特許行政部門は、特許情報公共サービス体系の構築を強化し、特許情報を完全、正確、適時に発表し、特許の基礎データを提供し、定期的に特許公報を出版し、特許情報の普及と活用を促進しなければならない。

特許出願が公開又は公告されるまで、国務院特許行政部門の職員及び関係者は、その内容に対して秘密保持の責任を負う。

第二章 特許権付与の要件

第二十二条

特許権を付与する発明及び実用新案は、新規性、進歩性及び実用性を有しなければならない。

新規性とは、その発明又は実用新案が公知技術に該当せず、かつ、いかなる機関又は組織又は個人も同様の発明又は実用新案について、出願日以前に国務院特許行政部門に出願しておらず、かつ出願日以降に公開された特許出願文書又は公告の特許文書において記載されていないことをいう。

進歩性とは、公知技術に比べて、その発明が格別の実質的特徴及び顕著な進歩を有し、その実用新案が実質的特徴及び進歩を有することをいう。

実用性とは、その発明又は実用新案は、製造又は使用が可能であり、かつ積極的な効果を生じ得ることをいう。

本法にいう公知技術とは、出願日以前に国内外で公衆に知られている技術をいう。

第二十三条

特許権を付与する意匠は、公知意匠に該当しないものであり、かつ、いかなる機関又は組織又は個人も同様の意匠について、出願日以前に国務院特許行政部門に出願しておらず、かつ出願日以降に公開された特許文書において記載されていない。

特許権を付与する意匠は公知意匠又は公知意匠の特徴の組合せに比べて、明らかな相違がなければならない。

特許権を付与する意匠は、出願日以前に他人が先に取得している合法的権利と抵触してはならない。

本法にいう公知意匠とは、出願日以前に国内外で公衆に知られている意匠をいう。

第二十四条

特許出願する発明創造が出願日以前の6ヶ月以内に、次の各号の一つに該当する場合、その新規性を喪失しないものとする：

（一）国家において緊急事態又は非常事態が発生し、公共の利益のために初めて公開したもの；

（二）中国政府が主催又は認可した国際展覧会において初めて出展したもの；

（三）所定の学術会議又は技術会議で初めて発表したもの；

（四）他人が出願人の同意を得ずにその内容を漏らしたもの；

第二十五条

次に掲げるものに対しては、特許権を付与しない：

（一）科学的発見；

（二）知的活動の規則及び方法；

（三）疾病の診断及び治療方法；

（四）動物及び植物の品種；

（五）原子核変換方法及び原子核変換方法で得られた物質；

（六）平面印刷品の模様、色彩又は両者の組合せによって作成され主に標識として用いられるデザイン。

前項第（四）号の製品の生産方法に対しては、本法の規定に基づいて特許権を付与することができる。

第三章 特許の出願

第二十六条

発明又は実用新案の特許出願を行う場合は、願書、明細書とその要約及び特許請求の範囲等の書類を提出しなければならない。

願書には、発明又は実用新案の名称、発明者の氏名、出願人の氏名又は名称、住所及びその他の事項を記載しなければならない。

明細書には、発明又は実用新案について、その技術分野に属する技術者が実施することができる程度に、明瞭かつ完全な説明を記載しなければならない。必要なときには、図面を添付しなければならない。要約には、発明又は実用新案の技術の要点を簡潔に説明しなければならない。

特許請求の範囲には、明細書に基づき、特許の保護を求める範囲を明瞭且つ簡潔に記載しなければならない。

発明創造が遺伝資源に依存して完成したものである場合、出願人は出願書類に当該遺伝資源の直接的由来と原始的由来を明示しなければならない。出願人が遺伝資源の原始的由来を明示できない場合、その理由を陳述しなければならない。

第二十七条

意匠の特許出願を行う場合は、願書、その意匠の図面又は写真及びその意匠に関する簡単な説明等の書類を提出しなければならない。

出願人が提出した関係図面又は写真は、特許の保護を求める製品の意匠を明瞭に示さなければならない。

第二十八条

国務院特許行政部門が特許出願書類を受け取った日を出願日とする。出願書類が郵送された場合は、郵便の消印日を出願日とする。

第二十九条

出願人は発明又は実用新案を外国で最初に特許出願した日から12ヶ月以内に、又は意匠を外国で最初に特許出願した日から6ヶ月以内に、中国で同一の主題について特許出願する場合、その外国と中国とで締結した協定又は共に加盟している国際条約に基づき、又は互いに優先権を認める原則に従い、優先権を享有することができる。

出願人は発明又は実用新案を中国で最初に特許出願した日から12ヶ月以内に、国務院特許行政部門に同一の主題について特許出願する場合、優先権を享有することができる。

第三十条

出願人が発明、実用新案について特許優先権を主張する場合、出願時に書面で声明を提出し、かつ最初に特許出願を提出した日から16ヶ月以内に、最初に提出した特許出願書類の謄本を提出しなければならない。

出願人が意匠について特許優先権を主張する場合、出願時に書面で声明を提出し、かつ3ヶ月以内に、最初に提出した特許出願書類の謄本を提出しなければならない。

出願人が書面による声明を提出せず、又は期限を過ぎても特許出願書類の謄本を提出しない場合は、優先権を主張していないものとみなされる。

第三十一条

一件の発明又は実用新案の特許出願は、一つの発明又は実用新案に限らなければならない。一つの総体的な発明構想に属する二つ以上の発明又は実用新案は、一件の出願として提出することができる。

一件の意匠の特許出願は、一つの意匠に限らなければならない。同一の製品に関する二つ以上の類似意匠、又は同一の分類に属し、かつセットとして販売又は使用される製品に用いられる二つ以上の意匠は、一件の出願として提出することができる。

第三十二条

出願人は、特許権を付与されるまでは、随時その特許出願を取り下げることができる。

第三十三条

出願人は、その特許出願書類を補正することができる。ただし、発明及び実用新案の特許出願書類の補正は、元の明細書及び特許請求の範囲に記載された範囲を超えてはならない。意匠の特許出願書類の補正は、元の図面又は写真に示された範囲を超えてはならない。

第四章 特許出願の審査及び許可

第三十四条

国務院特許行政部門は、発明特許出願を受理した後、方式審査を経て本法の要件を満たしていると判断した場合、出願日から満18ヶ月後に公開する。国務院特許行政部門は、出願人の請求に基づきその出願を早期公開することができる。

第三十五条

発明特許出願の出願日から三年以内に、国務院特許行政部門は、出願人の随時提出した請求に基づき、その出願に対して実体審査を行うことができる。出願人が正当な理由なく期間を経過しても実体審査を請求しない場合は、その出願は取り下げられたものとみなされる。

国務院特許行政部門は、必要と認める場合、職権で発明特許出願について実体審査を行うことができる。

第三十六条

発明特許の出願人は、実体審査を請求する場合、その発明に関連する出願日以前の参考資料を提出しなければならない。

すでに外国で出願された発明特許については、国務院特許行政部門は出願人に、指定期間内に、その国がその出願を審査するため検索した資料又は審査結果の資料を提出するよう要求することができる。出願人が正当な理由なく期間を経過しても提出しない場合、その出願は取り下げられたものとみなされる。

第三十七条

国務院特許行政部門は、発明特許出願の実体審査を行って本法の規定に合致しないと判断した場合、出願人に通知し、指定期間内に意見を陳述するか、又はその出願について補正を行うよう要求しなければならない。出願人が正当な理由なく期間を経過しても意見陳述又は補正を行わない場合、その出願は取り下げられたものとみなされる。

第三十八条

発明特許出願の出願人が意見陳述又は補正を行った後、国務院特許行政部門が依然として本法の規定に合致しないと判断した場合は、拒絶査定しなければならない。

第三十九条

発明特許出願は実体審査を受けて拒絶理由が見つからなかった場合には、国務院特許行政部門は、発明特許権を付与する決定を下し、発明特許証書を発行するとともに、それを登記して公告する。発明特許権は公告の日より効力が生じる。

第四十条

実用新案及び意匠の特許出願は方式審査を受けて拒絶理由が見つからなかった場合には、国務院特許行政部門は実用新案特許権又は意匠特許権を付与する決定を下し、相応する特許証書を発行するとともに、それを登記して公告する。実用新案特許権及び意匠特許権は公告の日より効力が生じる。

第四十一条

特許出願人は国務院特許行政部門の拒絶査定に不服である場合、通知受領日から3ヶ月以内に、国務院特許行政部門に不服審判を請求することができる。国務院特許行政部門は不服審判後に決定を下し、かつ特許出願人に通知する。

特許出願人は国務院特許行政部門の不服審判の決定について不服である場合、通知受領日から3ヶ月以内に人民法院に提訴することができる。

第五章 特許権の存続期間、消滅及び無効

第四十二条

発明特許権の期限は20年とし、実用新案特許権の期限は10年、意匠特許権の期限は15年とし、いずれも出願日から起算する。

発明特許の出願日から起算して満4年、かつ実体審査請求日から起算して満3年後に発明特許権が付与された場合、国務院特許行政部門が特許権者の請求に応じて、発明特許の権利付与プロセスにおける不合理的な遅延について特許権存続期間の補償を与える。ただし、出願人に起因する不合理的な遅延は除外する。

新薬の発売承認審査にかかった時間を補償するために、中国で発売許可を得られた新薬に関連する発明特許について、国務院特許行政部門は特許権者の請求に応じて特許権存続期間の補償を与える。補償の期間は5年を超えず、新薬発売承認後の特許権の合計存続期間は14年を超えないものとする。

第四十三条

特許権者は特許権を付与された年から年金を納付しなければならない。

第四十四条

次の各号の一つに該当する場合、特許権は存続期間の満了前に消滅する：

（一）規定に従って年金を納付しない場合；

（二）特許権者が書面での声明によりその特許権を放棄した場合。

特許権が存続期間の満了前に消滅した場合、国務院特許行政部門はこれを登記して公告する。

第四十五条

国務院特許行政部門が特許権を付与することを公告した日から、いかなる機関又は組織又は個人もその特許権の付与が本法の規定に合致しないと認めた場合は、国務院特許行政部門に当該特許権の無効審判を請求することができる。

第四十六条

国務院特許行政部門は、特許権の無効審判請求に対して速やかに審理及び決定を行い、かつ請求人及び特許権者に通知しなければならない。特許権を無効とする決定は、国務院特許行政部門により登記公告される。

国務院特許行政部門による特許権を無効とする決定又は特許権を維持する決定に不服である場合、通知を受領した日から3ヶ月以内に、裁判所に提訴することができる。裁判所は無効審判請求の相手方当事者に第三者として訴訟に参加するよう通知しなければならない。

第四十七条

無効とされた特許権は、最初から存在しなかったものとみなされる。

特許権を無効とする決定は、特許権が無効とされる前に裁判所が言い渡しかつすでに執行した特許権侵害の判決、調停書、すでに履行又は強制執行された特許権侵害紛争の処理決定、すでに履行された特許実施許諾契約及び特許権譲渡契約に対しては、遡及効力を有しない。ただし、特許権者の悪意により他人に損失をもたらした場合は、賠償しなければならない。

前項の規定に基づいて特許権侵害の賠償金、特許実施料、特許権譲渡の対価を返還しないことが、明らかに公平の原則に違反する場合は、全部又は一部を返還しなければならない。

第六章 特許の強制実施許諾

第四十八条

国務院特許行政部門、地方人民政府の特許事務管理部門は、同級の関連部門と共同して措置を講じ、特許公共サービスを強化し、特許の実施と活用を促進しなければならない。

第四十九条

国有企業事業機関又は組織の発明特許が国の利益又は公共の利益に対して重大な意味を持つ場合、国務院関係主管部門及び省・自治区・直轄市人民政府は国務院の認可を受け、認可された範囲内で普及・応用させることを決定し、指定された機関又は組織に実施を許諾することができる。実施機関又は組織は国の規定に基づいて特許権者に使用料を支払う。

第五十条

特許権者が自ら書面にて国務院特許行政部門に、如何なる機関又は組織又は個人の当該特許の実施を許諾する意思がある旨の声明を行い、かつ許諾実施料の支払方式、基準を明確にした場合、国務院特許行政部門はこれを公告し、開放的許諾を実施する。実用新案、意匠特許について開放的許諾声明を提出する場合、特許権評価報告書を提供しなければならない。

特許権者が開放的許諾声明を取り下げる場合は、書面により提出しなければならず、かつ国務院特許行政部門がこれを公告する。開放的許諾声明の取り下げが公告された場合、先に与えられた開放的許諾の効力には影響を及ぼさない。

第五十一条

如何なる機関又は組織又は個人も開放的許諾に係る特許を実施する意思がある場合、書面にて特許権者に通知し、かつ公告された許諾実施料の支払方式、基準に従って許諾実施料を支払うことにより、特許実施許諾を受けることができる。

開放的許諾の実施期間において、特許権者に対して特許年費の納付については、減免する。

開放的許諾を実施する特許権者は、被許諾者と許諾実施料について協議の上、通常実施権を付与することができるが、当該特許について専用又は排他的実施権を付与してはならない。

第五十二条

当事者は開放的許諾の実施について紛争が生じた場合、当事者間の協議によって解決する。協議する意向がない又は協議が成立しない場合、国務院特許行政部門に調停を請求することができ、また裁判所に提訴することもできる。

第五十三条

次の各号の一つに該当する場合、国務院特許行政部門は実施条件を備えている機関又は組織又は個人の申請に基づき、発明特許又は実用新案特許の強制実施許諾を与えることができる：

（一）特許権者が特許権を付与された日から3年間、かつ特許出願日から4年間にわたって正当な理由なくその特許を実施していないか又はその特許の実施が不十分である場合；

（二）特許権者による権利行使の行為が法により独占行為と認定され、当該行為による競争への不利な影響の取り除き又は軽減を目的とする場合。

第五十四条

国家の緊急事態又は非常事態が発生した場合、又は公共利益のために、国務院特許行政部門は、発明特許又は実用新案特許の強制実施許諾を与えることができる。

第五十五条

公衆の健康を守るために、特許権が付与された薬品について、国務院特許行政部門は、それを製造して中華人民共和国の加盟した関連国際条約の規定に合致した国又は地域に輸出するという強制許諾を与えることができる。

第五十六条

特許権を取得した発明又は実用新案が、先に特許権を取得した発明又は実用新案と比較して、顕著な経済的意義のある重要な技術的進歩を有し、その実施が先の発明又は実用新案の実施に依存する場合には、国務院特許行政部門は、後の特許権者の申請に基づき、先の発明又は実用新案の強制実施許諾を与えることができる。

前項の規定に基づいて強制実施許諾を与えた場合、国務院特許行政部門は、先の特許権者の申請に基づき、後の発明又は実用新案の強制実施許諾を与えることもできる。

第五十七条

強制許諾に係る発明創造が半導体技術である場合、その実施は公共利益の目的及び本法第五十三条第（二）項に規定する事由に限る。

第五十八条

本法第五十三条第（二）項、第五十五条の規定に基づいて与えられた強制許諾を除き、強制許諾の実施は主に国内市場の需要に供するためのものでなければならない。

第五十九条

本法第五十三条第（一）項、第五十六条に基づき、強制実施許諾を申請する機関又は組織又は個人は、合理的な条件で特許権者にその特許の実施許諾を求めたが、合理的な期間内に許諾を取得できなかったことを証明する証拠を提出しなければならない。

第六十条

国務院特許行政部門による強制実施許諾を与える決定は、速やかに特許権者に通知し、登記公告しなければならない。

強制実施許諾の決定は、強制許諾の理由に基づいて実施の範囲及び期間を定めなければならない。強制許諾の理由が消滅し、かつ再び発生しない場合には、国務院特許行政部門は特許権者の請求に基づき、審査をした上で強制実施許諾を終了する決定をしなければならない。

第六十一条

強制実施許諾を取得した機関又は組織又は個人は独占的実施権を有せず、かつ他人に実施を許諾する権利を有しない。

第六十二条

強制実施許諾を取得した機関又は組織又は個人は、特許権者に合理的な実施料を支払うか、又は中華人民共和国の加盟した関連国際条約の規定に基づいて実施料の問題を解決しなければならない。実施料を支払う場合、その額は双方が協議して定める。双方が合意に達することができない場合、国務院特許行政部門が裁決する。

第六十三条

特許権者が国務院特許行政部門の強制実施許諾の決定に不服である場合、特許権者及び強制実施許諾を得た機関又は組織又は個人が国務院特許行政部門の強制実施許諾の実施料に関する裁決に不服である場合、通知を受領した日から3ヶ月以内に裁判所に提訴することができる。

第七章特許権の保護

第六十四条

発明又は実用新案特許権の権利範囲は、その請求項の内容を基準とし、明細書及び図面は請求項の内容の解釈に用いることができる。

意匠特許権の権利範囲は、図面又は写真に示されたその製品の意匠を基準とし、簡単な説明は図面又は写真に示された製品の意匠の解釈に用いることができる。

第六十五条

特許権者の許諾を得ずにその特許を実施し、すなわちその特許権を侵害し、紛争を引き起こした場合は、当事者が協議により解決する。協議を望まず又は協議が成立しない場合には、特許権者又は利害関係者は裁判所に提訴することができ、また特許事務管理部門に処理を申請することができる。特許事務管理部門が処理して侵害行為が成立すると認定した場合、侵害者に直ちに侵害行為を停止するよう命じることができる。当事者は、不服である場合、処理通知を受領した日から15日以内に、「中華人民共和国行政訴訟法」に基づいて裁判所に提訴することができる。侵害者が期間を経過しても提訴せず、かつ侵害行為を停止しない場合には、特許事務管理部門は裁判所に強制執行を申請することができる。処理を行う特許事務管理部門は当事者の申請に基づき、特許権侵害の賠償額について調停を行うことができる。調停が成立しない場合、当事者は「中華人民共和国民事訴訟法」に基づいて裁判所に提訴することができる。

第六十六条

特許権侵害の紛争が新製品の製造方法に関する発明特許に関わる場合、同一の製品を製造する機関又は組織又は個人は、その製品の製造方法が当該特許方法と異なることを証明しなければならない。

特許権侵害の紛争が実用新案特許又は意匠特許に関わる場合、裁判所又は特許事務管理部門は、特許権者又は利害関係者に、国務院特許行政部門により係争実用新案又は意匠に対する調査、分析及び評価の上で作成された特許権評価報告書を提出するよう要求し、それを特許権侵害の紛争を審理、処理するための証拠とすることができる。特許権者、利害関係者又は侵害被疑者は自発的に特許権評価報告書を提示することもできる

第六十七条

特許権侵害紛争において、侵害被疑者が、その実施した技術又は意匠が公知技術又は公知意匠であることを証明できる場合、特許権侵害に該当しない。

第六十八条

特許を詐称した場合、法に基づき民事責任を負うほか、特許法執行担当部門が是正を命じたうえ、公告し、違法所得を没収し、違法所得の5倍以下の罰金に処することができる。違法所得がない又は違法所得が5万元以下の場合は25万元以下の罰金に処することができる。犯罪を構成する場合、法により刑事責任を追及する。

第六十九条

特許法執行担当部門は、取得した証拠に基づき、特許詐称の嫌疑行為を摘発するにあたって、次の措置をとる権限を有する。

（一）関連当事者を尋問し、違法被疑行為と関連する状況を調査する。

（二）当事者が違法被疑行為を行った場所に対して立入検査を実施する。

（三）違法被疑行為と関連する契約やインボイス、帳簿及びその他の関連資料を閲覧・複製する。

（四）違法被疑行為と関連する製品を検査する。

（五）特許詐称であることを証明する証拠がある製品については、封印又は差し押さえることができる。

特許事務管理部門は、特許権者又は利害関係者の請求に応じて特許権侵害紛争を処理するにあたって、前項第（一）項、第（二）項、第（四）項の措置をとることができる。

特許法執行担当部門、特許事務管理部門が法に基づき前二項に定めた職権を行使する場合、当事者はこれに協力し、支援を提供しなければならない。拒否、妨害をしてはならない。

第七十条

国務院特許行政部門は、特許権者又は利害関係者の請求に応じて、全国的に重大な影響を有する特許権侵害紛争を処理することができる。

地方人民政府の特許事務管理部門は、特許権者又は利害関係者の請求に応じて特許権侵害紛争を処理し、本行政区域内において同一の特許権を侵害した事件については併合して処理することができる。地域を跨って同一の特許権を侵害した事件については、上級の地方人民政府の特許事務管理部門に処理を請求することができる。

第七十一条

特許権侵害の賠償金額は、権利者が権利侵害によって受けた実際の損失又は権利侵害者が権利侵害によって得た利益に応じて確定する。権利者の損失又は権利侵害者が得た利益の確定が困難である場合、当該特許の許諾実施料の倍数を参酌して合理的に確定する。故意に特許権を侵害し、情状が深刻である場合、上記方法で確定した金額の1倍以上5倍以下で賠償金額を確定することができる。

権利者の損失、権利侵害者の得た利益、特許許諾実施料を確定することがいずれも困難である場合、裁判所は特許権の種類、権利侵害行為の性質及び情状等の要素に基づき、3万元以上500万元以下の賠償を認定することができる。

賠償金額には、権利者が権利侵害行為を制止するために支払った合理的な支出も含まれなければならない。

裁判所は賠償金額を確定するために、権利者がすでに立証に力を尽くしたにもかかわらず、権利侵害行為に係る帳簿、資料が主に権利侵害者に把握されている状況下では、権利侵害行為に係る帳簿、資料の提供を権利侵害者に命じることができる。権利侵害者はそれを提供せず、又は虚偽の帳簿、資料を提供した場合、裁判所は権利者の主張及び提供した証拠を参考にして賠償金額を判定することができる。

第七十二条

特許権者又は利害関係者が、他者が権利侵害行為や当該権利の実現を妨害する行為を実施している又は実施しようとしていることを証拠により証明し、それを速やかに制止しないとその合法的な権益が回復し難い損害を被る恐れがある場合、提訴前に、法に基づいて裁判所に財産保全措置、特定行為の履行命令又は特定行為の履行禁止命令を出すよう申請することができる。

第七十三条

特許権侵害行為を制止するため、証拠が消滅する恐れがある又は今後の取得が困難である場合、特許権者又は利害関係者は提訴前に法により裁判所に証拠保全を申請することができる。

第七十四条

特許権侵害の訴訟時効は3年とし、特許権者又は利害関係者が権利侵害行為及び侵害者を知った日又は知り得るべき日より起算する。

発明特許の出願公開から特許権付与までの間に当該発明が使用され、かつ適当額の使用料を支払われていない場合、特許権者が使用料の支払いを要求する訴訟時効は3年とし、特許権者が他者がその発明を使用していることを知った日又は知り得るべき日より起算する。但し、特許権者が特許権付与日以前に知っていた場合又は知り得るべき場合は、特許権付与日より起算する。

第七十五条

次の各号の一つに該当する場合、特許権の侵害とみなさない：

（一）特許権者又はその許可を得た機関又は組織又は個人が、特許製品又は特許方法により直接得た製品を販売した後に、当該製品の使用、販売の申し出、販売、輸入を行う場合；

（二）特許出願日以前にすでに同一製品を製造し、同一方法を使用し、又はすでに製造、使用のために必要な準備をしており、かつ従前の範囲内でのみ製造、使用を継続する場合；

（三）一時的に中国の領土、領海、領空を通過する外国の輸送手段が、その属する国と中国とで締結した協定又は共に加盟している国際条約、又は互恵の原則に従い、その輸送手段自身の必要のためにその装置及び設備において関係特許を実施する場合；

（四）専ら科学研究及び実験のために関係特許を実施する場合；

（五）行政審査に必要な情報を提供するために、特許薬品又は特許医療機器を製造、使用、輸入する場合、及び専らそのために特許薬品又は特許医療装置を製造、輸入する場合。

第七十六条

薬品発売承認審査において、薬品発売許可申請者と関連特許権者又は利害関係者は、登録出願された薬品に係る特許権について紛争が生じた場合、関連当事者は裁判所に提訴し、登録出願された薬品の関連技術方案が他人の薬品特許権の保護範囲に含まれているかどうかを判決するよう請求することができる。国務院薬品監督管理部門は規定された期限内に、裁判所による発効した判決により、関連薬品の発売許可を一時中止するかどうかの決定を下すことができる。

薬品発売許可申請者と関連特許権者又は利害関係者は、登録出願された薬品に係る特許権紛争について、国務院特許行政部門に行政裁決を請求することもできる。

国務院薬品監督管理部門は国務院特許行政部門と共同して、薬品発売の承認と薬品発売許可申請段階の特許権紛争解決の具体的な係合弁法を制定し、国務院に報告して承認を得てから施行する。

第七十七条

特許権者の許諾を得ずに製造、販売された特許権侵害製品であることを知らずに、それを生産経営の目的で使用、販売の申し出又は販売した場合、その製品の合法的な由来を証明することができる場合、賠償責任を負わない。

第七十八条

本法第十九条の規定に違反して外国に特許出願し、国家の秘密を漏らした者に対しては、その属する機関又は組織又はその上級主管機関が行政処分を与える。犯罪を構成する場合、法に照らして刑事責任を追及する。

第七十九条

特許事務管理部門は、社会に向ける特許製品の推薦などの経営活動に参加してはならない。

特許事務管理部門が前項の規定に違反した場合、その上級機関又は監察機関が是正を命じ、影響を解消し、不法収入がある場合はそれを没収する。情状が重大である場合は、直接的責任を負う主管者及びその他の直接的責任者に対し、法に照らして行政処分を与える。

第八十条

特許事務の管理に従事する国家機関の役人及びその他の関係する国家機関の役人が、職務怠慢、職権濫用をしたり、私情にとらわれて不正を行ったりして、犯罪を構成する場合、法に照らして刑事責任を追及する。犯罪を構成しない場合、法に照らして行政処分を与える。

第八章附則

第八十一条

国務院特許行政部門に特許出願又はその他の手続を行う場合、規定に従って費用を納付しなければならない。

第八十二条

本法は、1985年4月1日より施行する。

(出典：国家知識産権局2020年11月23日)

https://www.cnipa.gov.cn/art/2020/11/23/art_97_155167.html